お猫様は自ら栄養バランスを調整されていることは、過去の記事で言及しました。
そこでひとつ疑問が。
自分で栄養バランスを調整できるのであれば、なぜ太ってしまうお猫様がいるのでしょうか?
この原因についてまとめたいと思います。
お猫様は、摂取カロリー自体は調整できない
お猫様が調整しているのは、エネルギー(摂取カロリー)の量ではなく、エネルギー源の内訳です。
お猫様は哺乳類ですので、エネルギー源は人と同じ「たんぱく質」「脂質」「炭水化物」です。
人は主に「炭水化物」からエネルギーを得ていますが、お猫様は肉食なので「たんぱく質」からエネルギーを得ることを得意としています。
お猫様が調整できるのは、エネルギーの量ではなく、エネルギー源の内訳であることに注意が必要です。
ちなみに、お猫様のエネルギー源の理想のバランスは次のとおりです。
たんぱく質 | 脂質 | 炭水化物 | |
重量ベース | 約60% (26g) | 約21% (9g) | 約19% (8g) |
カロリーベース | 約48% | 約37% | 約15% |
太る理由は、摂取カロリー≧必要カロリー
お猫様はなぜ太ってしまうか。
これは人も同じですね。
理由は、必要カロリーよりも摂取カロリーが上回るからです。
余ったカロリーが脂肪として体内に蓄積され、太ってしまいます。
では、なぜ必要カロリーよりも摂取カロリーが上回るのでしょうか。
お食事の量が多い
お猫様は、何からエネルギー(カロリー)を得るかは自ら調整できます。
特に炭水化物の量については1日に摂取する上限があります。
一方で、摂取するエネルギーの総量については調整できません。
よって、炭水化物の割合が少ない(=たんぱく質の割合が多い)フードの場合、お猫様によっては食べ過ぎてしまうということが考えられます。
お食事の準備の手間を省くため、常にお猫様がお食事ができるようにしておく場合があるかもしれませんが、炭水化物の割合が少ないフードの場合は注意が必要です。
お食事の量に比して活動量が少ない
お猫様のお食事の量については、トップページでご紹介しています。
お猫様の状態や体重から一日の活動量(消費エネルギー)を割り出して、一日に必要なエネルギー量を算出しています。
ただし、これは目安です。
お猫様の一日の活動量はお猫様によって違います。
また、季節や日によっても変わるでしょう。
よって、お猫様の状態をよく観察して、お食事の量を調整してあげることが必要です。
肥満による危険性
ぽっちゃりとしたお猫様は、それはそれでかわいいですよね。
人も、「少しぽっちゃりくらいがかわいい」なんて言われることもあったような、なかったような…
ただ、人と同じで、肥満は次のような病気の原因になります。
糖尿病
肥満から思いつく病気の代表と言えば「糖尿病」ですね。
体が糖をうまく利用できなくなり、血中や尿に糖が出てしまう病気です。
これにより、栄養状態の悪化や神経系の異常、免疫力低下などを引き起こします。
糖尿病は体の状態を示していて、糖尿病になることで色々な悪影響を及ぼすものと考えた方がよさそうです。
肝臓病
肥満による「肝臓病=脂肪肝」です。
肝臓に脂肪がたまり過ぎることにより、本来の機能が果たせなくなります。
肝臓は、栄養素の分解、合成、貯蔵を行ったり、体の中の毒素を分解したりといった重要な働きをしていますので、肝臓の機能低下は、体への影響が重大です。
高脂血症
血液中のコレステロールと中性脂肪の両方、もしくは一方の濃度が増加する症状です。
いわゆるドロドロ血です。
お猫様の場合は、ドロドロ血による動脈硬化や脳梗塞、心筋梗塞などの心配はあまりないようですが、嘔吐や下痢、食欲不振などの症状を引き起こします。
お猫様が太ってきたなと感じたら…
肥満は、いろいろな病気の原因につながります。
日ごろからお猫様の状態をよく確認しておくことが必要です。
お猫様がちょっと太ってきな…と感じた場合は、次の対処法が考えられます。
お食事の量を減らす
これは普通のことですね。
お食事での摂取カロリーの方が消費カロリーよりも多い状態ですので、単純にお食事の量を減らすことによって摂取カロリーを減らします。
ただ、この方法は、お猫様が不満をお持ちになる可能性もありますね。
活動量を増やす
これも普通の考え方ですね。
活動量を増やすことで消費カロリーを増やし、摂取カロリーよりも消費カロリーを多くする方法です。
活動量を増やす方法としては、おもちゃで遊んであげる方法や、キャットタワーなどを購入してご自分で運動をしてもらう方法が考えられます。
炭水化物の割合の多いフードを与える
お猫様は1日に摂取する炭水化物の量を調整しています。
概ね、体重1㎏当たり3gが上限です。
それ以上になるとお食事を自ら制限されます。
これを逆手に取れば、お猫様の摂取カロリーを制限できそうです。
例としては、次のとおりです。
前提条件は次のとおりです。
- 体重4㎏の去勢・避妊済の成猫
- いつものお食事は、ドライフードの「ジャガー」を1日に必要とされるカロリー(238㎉)分召し上がっており、それで満足されている。
- このことから、このお猫様の1日に摂取する炭水化物量の上限は13gとする。
このような前提条件で、お猫様がちょっと太ってきている状況であると考えます。
このお猫様の1日に摂取する炭水化物量の上限は13gですので、炭水化物量の多いフードに変えれば、238㎉よりも低いカロリーで炭水化物量の上限に達することになります。
例えば、「ジャガー」よりも炭水化物量の多い「モグニャンキャットフード」に変えたとします。
その場合、炭水化物量の上限である13gを摂取したときの「モグニャンキャットフード」の摂取量は31gで、その時の摂取カロリーは117㎉になります。
よって、ジャガーよりもお猫様の摂取カロリーは少なくなりますね。
上記の例は極端な例であり、急にお食事を変えると食べてくれなかったりしますので、実際には「ジャガー」に「モグニャンキャットフード」を混ぜてお出しすることになります。
ここでは「ジャガー」と「モグニャンキャットフード」を例に出しましたが、他のフードでも同様の方法で対応が可能です。
全量を入れ替えなくても、炭水化物量の多いフードを混ぜてお出しすることで、お猫様の摂取カロリーを少なくすることが可能になります。
ちょっと最近ぽっちゃりしてきたかなという場合は、試す価値はありそうです。
なお、フードには合う合わないがありますので、新しいフードを与える場合は、注意深くお猫様の様子を観察する必要があります。
また、フードをあらかじめ数種類お出ししておけば、そのバランスを変えるだけですので、お猫様に負担をかけずに体形管理ができるのでおすすめです。